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2017/06/04

大日落語会に思う

   私の友人に、Yくんという熊がいる。いやいや、私の友人に熊のような風貌のYくんという男がいる。不動産鑑定士という土地建物の相場を操る怪しい職業の彼であるが、趣味が高じて数年前から落語会を開くようになった。事務所が大日町にあるという安易な理由で「大日落語会」というもっともらしい名前を付け、年に数回、主に日本料理屋さんの座敷を借りて、いわゆるライブを開いている。

 

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   先日、橘屋圓太郎師匠と春風亭一蔵さんを招いて、多治見を代表する老舗料理店である松正さんで、落語会が開かれた。第4回目である。この熊くん、口は軽いが人望に篤く、貧乏なくせに市内の大御所とネットワークを持っている。他人の弱みでも握っているのだろうか、毎回結構な動員力を発揮する。例によって、今回も会場は満員盛況であった。

 

   高座に上がった二つ目の春風亭一蔵さんは、とにかく声がでかい。若い落語家らしく、元気で明るいのがいい。そして、真打、橘屋圓太郎師匠は、女形の演技が良く、とても笑わせてもらった。いずれもさすがプロである。落語も当然ながら、客いじりも慣れておられる。それぞれ二席ずつ、披露されたが、とにかく笑いっぱなしの2時間であった。

 

   どうやら現在、相当な落語ブームらしい。落語家と呼ばれる方は約800人おり、江戸時代以降で過去最多の人数だという。ただし、実際に食えているのは上澄みの100人であるともいわれている。

 

   ご存じのとおり、落語界は師弟制度で成り立ち、下積みが随分と長いらしい。まず、師匠を見つけて入門し、雑用一切をこなす「見習い」から、寄席の「前座」に昇進し、ようやく一人前の落語家として認められる「二つ目」になるまで最低4年。これで一応、雑用から解放されるものの、師匠から手当としてもらえていた「小遣い」はストップ。あくまで仕事はフリーであるから、厳しいサバイバル競争に突入である。そしてここから、「真打」と呼ばれる弟子の取れる師匠になるまで約10年かかるという。世間では、真打でなければ落語家としては認められないから、相当厳しい10年だと思う。

 

   とはいうものの落語家には定年退職はない。30代で引退を余儀なくされるスポーツ選手とは違い、生涯現役である。長く続ければ続くほど、勲章や人間国宝に近づく長寿職業なのである。もちろんそれは、たった一握りの人しか当てはまらないのだろうが、入門する若者が後を絶たないというから、魅力のひとつとなっているのだろう。

 

   さて、その修業時代の印象深いエピソードを、以前、立川晴の輔師匠から聞いたことがある。熊くんが早くから目を付けた落語界のホープである晴れの輔師匠は、テレビ出演も多い立川志の輔に弟子入りした。非常に厳しい師匠であったようだが、ある朝、新幹線のホームで「おい、あさひを買って来い」と師匠から言われたらしい。「はい」と返事をしたものの、一口に「あさひ」と言われてもキオスクでは、「アサヒビール」「朝日新聞」「週刊朝日」「朝日牛乳」・・・色んな「あさひ」が売っている。師匠に聞き返そうものなら、とたんに雷が落ちるので怖くて聞けない。一事が万事、こういう場面が日常的であったらしい。その場の空気を読み、師匠の頭の中を想像する。素晴らしいことではないか。どの「あさひ」なのかが、人間力を成長させる。マニュアルがどうのこうのでは、人は育たないのである。確か正解は、「朝日新聞」であったような気がするが、それは忘れてしまった。その師弟関係の修行の仕組みに、大いに感心したのである。

 

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   今の世の中では、修行を嫌う傾向が強い。すぐに理不尽だ、不公平だ、パワハラだとやかましい。しかし、芸であれ技術であれ、一流のものは、厳しい努力の結果にしか生まれない。師弟制度、大いに結構なのである。今話題となっている、ひたすら働かないことを目指す「働き方改革」は、日本人を骨抜きにする欧米の仕組んだ罠だと、早く気付くべきなのである。

 

   さて、そろそろ私も弟子を取ることを考えてみようか。自分に優しい師匠であるから、弟子入りした人は、必ず成長すると思うよ。

 

 

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